添乗員ライターがお届けする旅行情報。今回は沖縄・西表島のすぐ沖合に浮かぶ小さな楽園「由布島」と、そこへ渡る唯一無二の乗り物「水牛車」の魅力をたっぷりお伝えします。
浅瀬の海をゆっくりと歩む水牛、聞こえてくる三線の音色、眼前に広がる碧い水平線。由布島へ向かう水牛車は、単なる移動手段ではなく、沖縄の原風景そのものを体感できる旅の体験です。石垣島から日帰りでも訪れることができ、亜熱帯植物が生い茂る島全体がそのまま植物園になっているという珍しさも相まって、八重山屈指の人気スポットとして多くの旅行者を惹きつけてきました。
一方で、西表島へのアクセスや移動の段取りを事前に把握していないと、思わぬ混雑や待ち時間に悩まされることも。限られた旅の時間を有効に使うためにも、料金のしくみや水牛車の時刻、島内の見どころを事前に押さえておくことが大切です。
アクセスの複雑さをあらかじめ知っておこう
由布島は沖縄県の最西端に位置する離島のなかでも、アクセスに複数のステップが必要な場所です。石垣島から直接フェリーで向かうことはできず、まず西表島(上原港または大原港)に渡り、そこからさらに陸路を移動して水牛車乗り場「旅人の駅」へたどり着く必要があります。
上原港からは車で約35分、大原港からは車で約20分が目安です。西表島はタクシーの台数が非常に少なく、路線バスも本数が限られています。自由な移動には現地でのレンタカー確保が現実的ですが、石垣島発の観光ツアーに参加すれば、フェリーの手配からバスでの送迎まで一括してカバーしてもらえるため、はじめての方にとっては最もスムーズな選択肢です。
また、夏季(6〜9月頃)の大潮時期には潮位の影響で営業開始時刻が変動することがあります。旅程を組む際は、潮汐の状況にも念のため目を向けておくと安心です。
昭和の台風が消し去った集落と、一人の老人の夢

由布島の島名は、八重山の方言で砂州を意味する「ユブ」に由来します。周囲約2.1km、最高点でも海抜わずか1.5mという極めて低平な島は、与那良川が運んだ土砂が長年にわたり堆積してできた地形です。
かつて由布島は、竹富島や黒島から移り住んだ人々が農業を営みながら暮らす小さな集落でした。水牛はその農耕を支える重要な存在で、昭和7年(1932年)頃、台湾の開拓民と共に石垣島へ渡ってきたものが西表・由布島周辺にも広まったとされています。当時は「水牛2頭で家が建つ」と言われるほど高価な存在で、昭和30年代には各家庭に1頭の水牛が飼われるほど島は活気を帯びていました。
しかし昭和44年(1969年)、エルシー台風が由布島を直撃します。海抜が低く島全体が浸水した被害は壊滅的で、生存した島民のほとんどは対岸の西表島・美原地区へと移住していきました。
そんな廃村同然となった島に残り続けたのが、故・西表正治おじい夫妻です。人々が去った後も二人は島に残り、「島をパラダイスガーデンへ」というロマンを描きながら、たった1頭の水牛で土や堆肥を運び、ヤシや南国の花々を植え続けました。その情熱と人柄に感化された多くの人々の支援を受けながら、二人は手作りの楽園を少しずつ作り上げていきました。これが現在の「亜熱帯植物楽園 由布島」の原点です。
1頭の水牛と老夫婦の夢から始まった楽園が、今や年間数十万人が訪れる八重山の名所へと成長した——その事実を知ると、水牛車に乗って島へ渡る体験に一層の深みが増すことでしょう。
水牛車体験:海を渡る15分間の非日常

由布島の最大の魅力は、なんといっても水牛車に乗って海を渡るという、世界でもここにしかない移動体験です。西表島と由布島を隔てる海の幅は約400m。満潮時でも水深1m程度の遠浅の海を、大きくてどっしりとした水牛がゆったりと引く車に揺られながら渡っていきます。
所要時間は片道約15分。その間、引率するスタッフが三線を弾きながら島唄を歌ってくれる場合もあり、潮風を感じながら南国の情景に浸れる贅沢な時間です。
水牛一頭一頭には固有の名前がついており、乗車中はその水牛の性格や特徴をスタッフが解説してくれます。「尻尾が上がったらトイレのサイン」という微笑ましいエピソードも有名で、待合所で辛抱強くお客さんを待っている間はずっとトイレを我慢しているとも言われています。
水牛車は定期便として運行されており、乗車前に西表島側の「旅人の駅」でチケットを購入します。繁忙期や土日は混雑することがあるため、乗りたい時刻の10分前には乗り場に到着しておくのが賢明です。
水牛車定期便 時刻表
公式サイトに掲載されている最新の定期便時刻は以下のとおりです(潮位の状況によって変更される場合があります)。
| 西表島発 | 由布島発 |
|---|---|
| 9:15 | — |
| 9:45 | 10:00 |
| 10:15 | 10:30 |
| 10:45 | 11:00 |
| 11:15 | 11:30 |
| 11:45 | 12:00 |
| 12:15 | 12:30 |
| 12:45 | 13:00 |
| 13:15 | 13:30 |
| 13:45 | 14:00 |
| 14:15 | 14:30 |
| 14:45 | 15:00 |
| 15:15 | 15:30 |
| 15:45 | 16:00 |
| — | 16:30 |
営業時間:9:15〜16:30(入園締切15:45)
入園料金と各種割引

水牛車の乗車料金には由布島の入園料が含まれています。徒歩でも島へ渡ることは可能ですが、由布島の体験の醍醐味は水牛車にありますので、往復水牛車での入島をおすすめします。
入園料金一覧
| 区分 | 大人(中学生以上) | 小人(小学生) |
|---|---|---|
| 往復水牛車 + 入園料 | 2,000円 | 1,000円 |
| 徒歩 + 入園料 | 700円 | 350円 |
| 障がい者割引(往復水牛車) | 1,600円 | 800円 |
| 団体割引(15名以上・往復水牛車) | 1,800円 | 900円 |
※小学生未満のお子様は無料。
※障がい者割引は手帳をお持ちのご本人と同伴者1名が対象。
チケット購入方法
チケットは西表島側の「旅人の駅」にて購入できます。支払いはクレジットカード(VISA・Master・JCB・AMEX等)、交通系IC(Suica・ICOCAほか)、PayPay、iDなど多様な電子マネーにも対応しており、現金不要で利用できます。水牛車定期便の事前予約は公式サイトの予約システムからも可能です。
施設基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 亜熱帯植物楽園 由布島 |
| 住所 | 沖縄県八重山郡竹富町古見694 |
| チケット売り場 | 西表島側「旅人の駅」(古見地区) |
| 営業時間 | 9:15〜16:30(入園締切15:45) |
| 定休日 | なし(悪天候・大潮時に運休あり) |
| 上原港からのアクセス | 車で約35分 |
| 大原港からのアクセス | 車で約20分 |
| 駐車場 | あり(旅人の駅周辺・無料) |
亜熱帯植物楽園 由布島の見どころ

水牛車で島に到着すると、一面に広がる亜熱帯の植物と南国の花々が出迎えてくれます。徒歩で一周しても1時間程度の小さな島ですが、エリアごとに異なる魅力があり、思ったより多くの見どころがあります。
ブーゲンビレアガーデン
鮮やかなサンデリアナ、レインボー、赤・白・黄色など色とりどりのブーゲンビレアが年間を通じて咲き誇るエリアです。南国の花々のなかでも特に映え写真が撮りやすく、多くの来園者が足を止めます。
蝶々園

日本最大級の蝶「オオゴマダラ」が生息する専用エリアです。白と黒の大きな羽を優雅に広げてゆったりと飛ぶ姿は幻想的で、何枚でも写真を撮りたくなります。そして必見なのがサナギです——オオゴマダラのサナギはまるで黄金の宝飾品のように輝く、鮮やかな金色をしています。これは全国でも由布島が特に有名な観察スポットで、一見の価値があります。
水牛の池

名前のとおり、仕事を終えた水牛たちが過ごすエリアです。水が大好きな水牛は1日中池に浸かっていることも珍しくありません。生まれたばかりの子牛が親水牛と仲良く過ごす様子が見られることもあり、やさしい気持ちになれる癒しのスポットです。
マンタの浜

目の前に小浜島を望む美しいビーチです。由布島と小浜島の間の海がマンタの通り道となっていることが名前の由来で、南国らしい開放的なロケーションが魅力。併設の「由布島茶屋」ではコーヒーやジェラートを楽しみながら海を眺めることができます。
shell & green Oasis(シェル&グリーン オアシス)
貝類と植物が展示されているエリアで、園内に咲く草花をより近くで観察できます。子どもから大人まで、自然と生物への興味を深めるのにぴったりの場所です。
レストランと売店
島内にはレストランのほか、由布島茶屋(コーヒー・ジェラートなど)や水牛商店(お土産)があります。ランチは園内レストランでの沖縄料理が選べますが、繁忙期は席が埋まりやすいため早めに入店するのがおすすめです。なお、2025年10月からお食事がセルフサービス形式に変更されています。
水牛車体験を最大限楽しむためのポイント

由布島観光をより充実させるためのいくつかのポイントをお伝えします。
混雑を避けるなら午前の早い便か午後の遅い便を
ピークタイムは午前10時から午後2時の間です。9:15発の始発か、14時台以降の便を狙うと比較的スムーズに乗車できます。
潮の状況を事前にチェック
大潮の日や台風・大雨の際は水牛車が運休になることがあります。遠浅の海とはいえ、満潮時の深さは最大1m程度。旅行前に潮位の状況を確認しておくと安心です。
徒歩での渡島も選択肢のひとつ
水牛車が満員で待ち時間が長い場合や、潮が引いている時間帯であれば徒歩で渡ることも可能です(入島料は別途必要)。ただし由布島への旅の醍醐味は水牛車にあるので、時間に余裕を持って計画するのが理想的です。
服装と持ち物
強い日差しと海風に備え、帽子・日焼け止め・サングラスは必須です。水牛車乗り場付近は砂地のため、歩きやすいシューズが快適です。島内の散策も含め、2〜3時間は余裕を持って計画しましょう。
合わせて訪れたい周辺の観光スポット
由布島への旅は、西表島の大自然とセットで楽しむのが定番です。由布島の水牛車乗り場(旅人の駅)を起点に、車で移動できる周辺の名所をご紹介します。
仲間川マングローブクルーズ
大原港からすぐの場所にある仲間川は、マングローブの流域面積が日本最大を誇る川です。遊覧船(乗船時間50〜90分・予約不要)に乗って船の上からマングローブ林を観察できます。日本最大の「サキシマスオウノキ」や、仲間川の東部にしか生育しない希少種「マヤプシキ」など、学術的にも貴重な植物と出合える体験は、由布島観光とセットにする旅行者が多い人気スポットです。大原港からは車で5分以内と、由布島へ向かう途中に立ち寄りやすいのも魅力です。
西表野生生物保護センター
イリオモテヤマネコをはじめ、カンムリワシやヤシガニなど西表島に生息する希少な野生生物の保護と情報発信を行う施設です。実物大の剥製や生態に関する展示、鳴き声クイズなど、子どもから大人まで楽しめるコンテンツが充実しています。生きたイリオモテヤマネコとの遭遇こそ叶いませんが、この島の自然の奥深さを知ることのできる貴重な拠点です。由布島の旅人の駅からは車で数分程度。
大見謝ロードパーク(マングローブ遊歩道)
大見謝川沿いの遊歩道で、360度がマングローブに囲まれた幻想的な散策路です。展望台からは鳩間島や西表島の海を一望でき、整備されたルートはサンダルでも歩けるほど気軽です。深くない川に降りることもでき、小さな子どもでも水遊びが楽しめます。
周辺のおすすめ宿泊施設
由布島自体には宿泊施設がないため、宿泊は西表島内での滞在が基本です。大原港周辺を拠点にすれば、由布島観光はもちろん、仲間川クルーズや野生生物保護センターへのアクセスも便利です。
西表島ホテル by 星野リゾート
西表島の北西部、上原港から車で約10分に位置する星野リゾート運営のリゾートホテル。目の前に広がるトゥドゥマリ浜は「神様が留まる場所」という言い伝えがある神聖な浜で、穏やかで美しい海岸線が魅力です。広々とした客室、島食材を活かしたビュッフェ、サンセット時のドリンクサービスやお目覚めストレッチなど宿泊者限定の無料コンテンツが充実。屋外プールや多彩なアクティビティも楽しめ、家族連れにも人気です。星空観察や自然散策など、西表島の大自然を存分に満喫できる滞在が叶います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 沖縄県八重山郡竹富町上原2-2 |
| アクセス | 上原港より無料送迎バスで約10分 |

エコヴィレッジ西表
大原港と上原港のちょうど中間に位置するバリ風リゾートホテル。広大な1,200坪の敷地に海と山の絶景が広がり、プライベートビーチへは徒歩5秒という贅沢なロケーションです。島の食材を活かした琉球創作料理が好評で、屋外プールも備えています。人工の灯りが消える夜には満天の星空が広がり、天の川まで肉眼で確認できます。トリップアドバイザーでも高評価を集めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 沖縄県八重山郡竹富町高那280-36 |
| アクセス | 大原港より車で約20〜30分 |

西表島ジャングルホテル パイヌマヤ
西表島の東部に位置する秘境型ホテル。「パイヌマヤ」とは八重山の方言で「南の猫」を意味し、名前のとおりホテル敷地内をイリオモテヤマネコが通ることもある、まさにジャングルの中の宿です。全室ジャングルビューで、ホーラ川のせせらぎと鳥の声が部屋まで届く自然体験型の宿泊を提供しています。西表島の島食材を使ったビュッフェも好評です。トリップアドバイザーで西表島2位の人気宿泊施設にランクインしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 沖縄県八重山郡竹富町高那243 |
| アクセス | 大原港より路線バスで約35分 |

まとめ:沖縄の原風景に出合う旅へ
由布島の水牛車は、旅のハイライトになりえる体験です。浅瀬の海を渡る約15分間、ゆっくりと歩む水牛の背中越しに見える西表島の緑と八重山の空は、どんな写真よりも記憶に残る光景です。亜熱帯植物楽園を散策し、黄金に輝くオオゴマダラのサナギを目にし、休憩中の水牛と記念撮影をする——それぞれの瞬間が、旅の思い出として積み重なっていきます。
西表島と由布島を効率的に回るには、石垣島発の日帰りツアーの利用が便利です。フェリーの手配から現地での移動まで一括でカバーしてもらえるため、初めて訪れる方でも安心して八重山の大自然を満喫できます。
沖縄旅行を検討している方は、ぜひジャルパック ダイナミックパッケージの利用も検討してみてください。石垣島や沖縄本島への航空券と宿泊をセットでお得に手配できるプランが充実しており、旅の準備をシンプルにまとめられます。
由布島の水牛車は、訪れた誰もが「また来たい」と思う体験です。せひ八重山の旅に組み込んでみてください。
