添乗員ライターがお届けする旅行情報。今回は静岡県富士宮市の朝霧高原に広がる観光施設、富士ミルクランドをご紹介します。標高600メートル前後の高原に立地するこの施設は、東に富士山、西に天子ヶ岳連山を望む雄大な景観の中にあります。動物とのふれあいや手作り体験、地元の生乳を使ったスイーツ、そして農産品の直売所まで、朝霧高原の酪農文化をひとところで味わえるのが特徴です。入場料と駐車場が無料という気軽さもあり、白糸の滝や田貫湖など周辺スポットをめぐる旅程の途中に立ち寄りやすい存在として親しまれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 富士ミルクランド |
| 営業時間 | まきばショップ・ジェラート工房・農産品直売所は平日10:00〜16:00(夏期・冬期は土日祝と同様)、土日祝・繁忙期は10:00〜18:00。動物ふれあい広場・レストランなどは施設ごとに時間が異なる |
| 定休日 | 年中無休(臨時休業あり) |
| 住所 | 静岡県富士宮市上井出3690番地 |
| アクセス | 東名高速道路富士ICまたは新東名高速道路新富士ICから車で約30分、富士宮道路上井出ICから車で約5分。JR身延線富士宮駅からは富士急行バスで「まかいの牧場」バス停まで進み、タクシーで約5分 |
公共交通機関では移動計画にゆとりを
富士ミルクランドを訪れる際にひとつ気に留めておきたいのが、公共交通機関でのアクセスにやや時間がかかる点です。JR身延線の富士宮駅からは路線バスとタクシーを乗り継ぐ必要があり、便数も限られているため、事前に時刻表を確認しておくと当日の移動がスムーズになります。また、まきばショップやジェラート工房、動物ふれあい広場、レストランはそれぞれ営業時間が異なり、冬季は開始時刻が繰り下がる施設もあります。目当ての体験や食事を逃さないためにも、訪問前に公式サイトで当日の営業時間を確認しておくとよいでしょう。車で訪れる場合は無料駐車場が整っているため、朝霧高原一帯をめぐるドライブの拠点として計画しやすくなっています。
陸軍演習地から酪農地帯へ、朝霧高原が歩んだ道のり

富士ミルクランドが位置する朝霧高原は、もとは周辺農家が入会地として草を刈り取っていた原野でした。日中戦争が始まった昭和12年に大日本帝国陸軍の演習地として接収され、昭和17年には陸軍少年戦車兵学校の演習場としても利用されるようになります。終戦とともに学校は廃止され、広大な演習場は草原として残されました。
戦後の日本は深刻な食料不足に直面しており、政府は緊急開拓事業実施要領を閣議決定し、全国の未利用地を農地として開拓する政策を進めます。これを受けて昭和21年、朝霧高原の旧演習地でも開拓団による自作農家創設事業が始まりました。しかし冷涼な気候と富士山由来の岩石に覆われた土壌のため、当初の畑作は思うように成果が上がらず、開拓団は大根やキャベツなど寒冷地に適した作物を選びながら、粘り強く土地に向き合い続けました。
転機となったのは昭和29年、朝霧高原一帯が国から高度集約酪農地域に指定されたことです。これ以降、地域は畑作から酪農へと軸足を移し、昭和30年代の草地改良事業などを経て、現在では酪農を主産業とする地域へと発展しました。富士ミルクランドで味わえる新鮮な牛乳やチーズ、ジェラートは、こうした開拓の歴史の上に成り立つ朝霧高原の恵みそのものといえます。
富士山を望む高原で楽しむ動物とのふれあい

富士ミルクランドの核となるのが、広大な敷地の中で動物と間近にふれあえる体験です。動物ふれあい広場では羊やヤギなどの動物にじかに触れることができ、エサやり体験では動物たちが近づいてくる様子を間近で楽しめます。予約制の酪農体験では近隣の牧場に移動し、牛の乳搾りやエサやりといった、より本格的な酪農の仕事を体験することも可能です。曳き馬体験では馬の背中から高原の景色を眺めながら、ゆっくりと馬場を一周できます。
そして視線を上げれば、天候に恵まれた日には東側に富士山が、西側には天子ヶ岳連山がそびえる景色が広がります。動物と遊びながらふと顔を上げると富士山が視界に入るという体験は、都市部の動物園やテーマパークにはない、朝霧高原ならではの魅力です。
朝霧高原の恵みを味わう乳製品とグルメ

富士ミルクランドのもうひとつの魅力は、朝霧高原の新鮮な生乳から手づくりされる乳製品です。搾りたての牛乳を使ったジェラートやソフトクリームは、口に入れるとすっと溶ける軽やかな口当たりが評判で、訪れる人の多くが目的にするほどの人気を誇ります。まきばショップではチーズやヨーグルトといった乳製品のほか、富士山チーズケーキやロールケーキなどのオリジナルスイーツも並びます。
レストランでは、朝霧高原の牛「ふじさんの牛」や地元産の豚肉を使った料理、そばやうどんといった軽食まで幅広いメニューが提供されています。農産品直売所には朝どれの新鮮な野菜も並び、富士山の伏流水でつくられた地酒やビールなど、朝霧高原ならではの品も手に入ります。買い物や食事を通じて、この土地の自然と食文化を体感できる構成になっている点が、富士ミルクランドの奥深さといえるでしょう。
家族で一日満喫できる遊び場としての充実度

富士ミルクランドは動物とのふれあいだけでなく、家族で体を動かして楽しめる設備も充実しています。広々とした芝生広場は思い切り走り回れる開放的な空間で、KIDS広場にはトランポリンやローリングなど子ども向けの遊具が揃っています。レンタサイクルを利用すれば、富士山を眺めながら高原の風を切って走る爽快感を味わえ、ガイドブックには載っていない自分だけの発見にも出会えます。バターづくり体験では、できたてのバターを特製のブッセと一緒に味わうことができ、小さな子どもから年配の人まで一緒に楽しめる内容です。
こうした体験の多くは動物ふれあい広場や芝生広場と近接して配置されているため、移動の負担が少なく、幼い子ども連れの家族でも無理のない旅程を組みやすい構成になっています。
ペットと一緒に過ごせる寛容な環境
富士ミルクランドは、犬を連れた旅行者にとっても利用しやすい施設です。建物内以外の敷地は犬も自由に歩き回ることができ、広々としたテラス席では犬を伴って食事を楽しめます。無料のドッグランではリードを外して自由に運動させることができ、ほかの犬との交流の場にもなっています。高原ロッジでは犬と一緒に宿泊することもでき、周囲を気にせず自然の中で過ごせる点は、人と動物が共存する朝霧高原らしい魅力のひとつです。
高原の宿「富士朝霧高原ロッジ」で過ごす滞在
富士ミルクランドの敷地内には、メゾネットタイプの高原ロッジが用意されています。吹き抜けのリビングが開放的なつくりで、ウッドデッキからは広大な芝生広場の向こうに富士山を大きく望むことができます。日帰りで動物とのふれあいや体験を楽しんだあと、そのまま敷地内で一泊し、翌朝もう一度高原の空気を味わうという滞在スタイルを選べるのも、この施設ならではの過ごし方です。
季節ごとに変わる朝霧高原の表情

富士ミルクランドの魅力は季節によっても変化します。新緑がまぶしい春から夏にかけては、広い芝生広場でのびのびと過ごすのに適した季節です。標高が高いため市街地に比べて涼しく、夏でも比較的過ごしやすい環境が保たれています。紅葉が色づく秋は、周辺の山々の彩りと合わせて高原の景色を楽しめる時期です。そして冬になると、雪化粧をまとった富士山を望めるようになり、期間限定のいちご狩りも見どころのひとつに加わります。冬季はKIDS広場などの利用時間が繰り下がる施設もあるため、訪問前に営業時間を確認しておくと安心です。
朝霧高原で立ち寄りたい周辺スポット
富士ミルクランドの周辺には、朝霧高原ならではの観光スポットが点在しています。あわせて訪れることで、一日を通して高原の魅力を味わう旅程を組むことができます。
まかいの牧場
車で約5分の距離にあるまかいの牧場は、羊やヤギ、牛などの動物とふれあいながらバターづくり体験やアスレチックを楽しめる観光牧場です。富士山を間近に望む高原の風景と合わせて、家族連れの立ち寄り先として親しまれています。
白糸の滝

車で約10分の距離にある白糸の滝は、富士山の地下水が地層の境目から幾筋にも分かれて流れ落ちる名瀑です。世界文化遺産「富士山〜信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産のひとつにも数えられ、繊細な水景を間近に見学できます。

田貫湖
車で約10分の距離にある田貫湖は、湖畔から富士山を一望できるビュースポットです。風が穏やかな時間帯には湖面に富士山が映り込む「逆さ富士」が見られることもあり、遊歩道やキャンプ場も整備されているため、散策を交えた半日から一日のコースに向いています。
あさぎり温泉 風の湯
車で約5分の距離にある日帰り温泉施設です。バナジウムを含む天然水を使った湯と炭酸泉の露天風呂があり、高原観光や体験で歩き回ったあとに立ち寄って疲れを癒やすのに適しています。
富士ミルクランド観光の拠点になる宿泊施設
富士ミルクランドを訪れる際の宿泊先としては、富士宮市街地や田貫湖周辺のホテルが便利です。
天然温泉「さくやの湯」スーパーホテル富士宮
新東名高速道路新富士ICから車で約9分、東名高速道路富士ICから車で約11分の郊外に位置するホテルです。男女別の天然温泉「さくやの湯」と、無料の朝食バイキングが利用できます。朝霧高原へのドライブ観光の拠点として利用しやすく、車移動を中心にめぐる旅程におすすめの一軒です。
休暇村富士
田貫湖のほとりに立つ休暇村富士は、全客室から富士山を望める眺望が魅力の宿です。アルカリ性単純泉の温泉で高原観光の疲れを癒やせるほか、湖面に映る「逆さ富士」を館内から眺められる点も特徴です。富士宮駅から路線バスで約45分とやや距離がありますが、田貫湖周辺をあわせて楽しみたい旅程にぴったりの宿泊先です。
富士宮富士急ホテル
JR富士宮駅から徒歩1〜2分という好立地にあるホテルです。無料の朝食バイキングが用意され、公共交通機関を中心に移動する旅程でも利用しやすい一軒です。部屋によっては雄大な富士山を望むこともでき、車を使わない旅行者にもおすすめできる立地の良さが魅力です。
まとめ

富士ミルクランドは、戦後の開拓と酪農地域指定を経て発展してきた朝霧高原の歴史を背景に、動物とのふれあいや手づくり体験、地元の乳製品を無料の入場料で楽しめる懐の深い施設です。まかいの牧場や白糸の滝、田貫湖といった見どころも車で10分圏内に集まっており、朝霧高原一帯を一日かけてめぐる旅程を組みやすいのも魅力といえます。宿泊先には、車移動を中心にめぐるなら朝霧高原へのアクセスがよい天然温泉「さくやの湯」スーパーホテル富士宮を、田貫湖周辺の景観もあわせて楽しみたいなら休暇村富士を選ぶと、滞在を通して朝霧高原の魅力をより深く味わえるでしょう。
