京都には「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録された17の寺社仏閣・城郭があります。1994年に日本で5番目の世界遺産として登録されて以来、国内外から年間数千万人の観光客が訪れる日本屈指の観光地となっています。しかし、これらの世界遺産は京都市、宇治市、滋賀県大津市にわたって広範囲に点在しているため、効率的に観光するには事前の綿密な計画が不可欠です。
本記事では、京都の世界遺産17か所の詳細な見どころと、2025年最新の拝観料金、そして効率的に巡るためのモデルコースを徹底解説します。
世界遺産巡りを計画する前に知っておくべき課題
京都の世界遺産を訪れる際、多くの観光客が直面する問題があります。それは広範囲に点在する17か所すべてを限られた時間で効率的に回ることの難しさです。
距離と時間の問題
京都の世界遺産は京都市内だけでなく、宇治市や滋賀県大津市まで広がっています。最も北にある上賀茂神社から最も南にある醍醐寺まで、直線距離で約20キロメートル以上離れています。公共交通機関を使用する場合、移動だけで1日が終わってしまうこともあります。
拝観時間の制約
各寺社には拝観時間が設定されており、多くは午後5時までとなっています。さらに、一部の寺社では事前予約が必要な場合もあります。西芳寺(苔寺)は事前申し込み制で、読経や写経などの修行への参加が拝観の条件となっています。
季節による混雑
春の桜シーズンや秋の紅葉シーズンには、人気の世界遺産は大変混雑します。清水寺や金閣寺などの主要スポットでは、入場までに長時間待つこともあります。
世界遺産を効率的に巡るための解決策
これらの課題を解決し、京都の世界遺産を効率的に巡るには、いくつかの戦略があります。
エリア別に分けて計画する
京都の世界遺産は、大きく「中南部」「北西部」「北東部」の3つのエリアに分けることができます。同じエリア内の世界遺産をまとめて訪問することで、移動時間を大幅に短縮できます。
地下鉄・バス一日券の活用
京都市内の移動には、「地下鉄・バス一日券」の利用が便利です。2025年現在、大人1,100円、小児550円で、市営地下鉄全線、市バス全線、京都バス(一部路線除く)、京阪バス(一部路線除く)、西日本JRバス(一部路線除く)が1日乗り放題となります。
地下鉄とバスを組み合わせることで移動時間を大幅に短縮でき、効率的に世界遺産を巡ることができます。市バスの初乗りが230円、地下鉄の初乗りが220円であることを考えると、3回以上乗車すれば元が取れる計算です。
ただし、比叡山頂への直行バス(比叡山線51系統)や一部の季節運行路線は対象外となるため注意が必要です。延暦寺へは出町柳駅から叡山電鉄とケーブルカー・ロープウェイを利用するか、別途料金を支払ってバスを利用する必要があります。
近接する寺社をセットで訪問
特に以下の組み合わせは徒歩圏内または短時間の移動で訪問可能です。
- 宇治エリア:平等院と宇治上神社(徒歩約10分)
- 京都駅周辺:東寺と西本願寺(バスで約15分)
- 衣笠エリア:金閣寺、龍安寺、仁和寺(バスで各5〜10分)
京都の世界遺産17か所を徹底解説
ここからは、京都の世界遺産17か所をエリア別に詳しくご紹介します。それぞれの歴史、見どころ、2025年最新の拝観料金を記載していますので、観光計画の参考にしてください。
中南部エリアの世界遺産(6か所)
京都駅からアクセスしやすい中南部エリアには、6か所の世界遺産があります。寺院が4か所、神社が1か所、城郭が1か所と多彩な構成となっています。
平等院
宇治市にある平等院は、藤原頼通が1052年に父・道長の別荘を寺院に改めたものです。国宝の鳳凰堂は10円硬貨のデザインとしても知られ、池に映る優美な姿は極楽浄土を表現したものと伝えられています。
鳳凰堂と阿弥陀如来坐像
鳳凰堂内には平安時代の仏師・定朝作の阿弥陀如来坐像が安置されています。この像は高さ約2.8メートルで、千年近い歴史を経た今も荘厳な輝きを放っています。堂内の壁面には52体の雲中供養菩薩像が配され、極楽浄土の世界を表現しています。
鳳翔館
鳳翔館は2001年に開館した博物館で、国宝や重要文化財を多数展示しています。梵鐘、鳳凰、雲中供養菩薩像などの貴重な文化財を間近で鑑賞できます。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 庭園:8:30〜17:30<br>鳳凰堂内部:9:30〜16:10(20分ごとの入替制)<br>鳳翔館:9:00〜17:00 |
拝観料 | 大人:600円<br>中高生:400円<br>小学生:300円<br>鳳凰堂内部拝観:別途300円 |
住所 | 京都府宇治市宇治蓮華116 |
アクセス | JR奈良線「宇治駅」から徒歩10分<br>京阪宇治線「宇治駅」から徒歩10分 |
宇治上神社
平等院から徒歩約10分の場所にある宇治上神社は、本殿が平安時代後期に建てられた日本最古の神社建築として知られています。国宝の本殿は一間社流造の社殿三棟からなる珍しい構造です。
桐原水
境内には宇治七名水の中で唯一現存する「桐原水」があります。この清水は今も湧き続けており、訪れる人々の喉を潤しています。
立砂
境内の清砂には、神が降臨したとされる神山を模した円錐形の盛り砂があり、パワースポットとして人気を集めています。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 9:00〜16:30 |
拝観料 | 無料 |
住所 | 京都府宇治市宇治山田59 |
アクセス | JR奈良線「宇治駅」から徒歩20分<br>京阪宇治線「宇治駅」から徒歩10分 |
醍醐寺
醍醐寺は874年に理源大師・聖宝により開創された真言宗醍醐派の総本山です。広大な境内には約80の堂宇が点在し、豊臣秀吉の「醍醐の花見」でも知られる桜の名所として人気があります。
五重塔
国宝の五重塔は951年に建立された京都府最古の木造建築物です。高さ約38メートルのこの塔は、応仁の乱や数々の災害を乗り越えて現存する貴重な建造物です。
三宝院
国宝の三宝院は、豊臣秀吉が「醍醐の花見」に際して自ら設計したと伝わる庭園があります。この庭園は国の特別史跡・特別名勝に指定されており、桃山時代の豪華な文化を今に伝えています。
霊宝館
醍醐寺霊宝館には、国宝や重要文化財を含む約15万点の寺宝が収蔵されています。春期と秋期の特別公開期間に多数の文化財が展示されます。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 9:00〜17:00(12月第1日曜日の翌日〜2月末は16:00まで) |
拝観料 | 通常期(3月21日〜12月第1日曜日)<br>・三宝院・伽藍・霊宝館:各800円<br>・通行券(三宝院・伽藍):1,500円<br>冬期(12月第1日曜日の翌日〜3月20日)<br>・三宝院・伽藍:各600円<br>・通行券:1,000円<br>※高校生以下は各200円引き |
住所 | 京都府京都市伏見区醍醐東大路町22 |
アクセス | 地下鉄東西線「醍醐駅」から徒歩10分 |
二条城
二条城は1603年に徳川家康が京都での宿所として造営した城郭です。1867年に江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜が大政奉還を行った場所として、日本の歴史上極めて重要な史跡となっています。
二の丸御殿
国宝の二の丸御殿は、6棟の建物が雁行形に連なる書院造の代表的建築です。各部屋には狩野派による障壁画が3,000面以上描かれており、桃山時代の絢爛豪華な文化を今に伝えています。
鶯張りの廊下
二の丸御殿の廊下は「鶯張り」と呼ばれる特殊な構造になっています。歩くとキュッキュッと音が鳴る仕組みで、侵入者を知らせる防犯装置として機能していました。
二の丸庭園
二の丸庭園は小堀遠州の作と伝えられる池泉回遊式庭園です。中央の池には蓬莱島、亀島、鶴島の三島が配され、豪壮な石組みが特徴的です。
項目 | 内容 |
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開城時間 | 8:45〜16:00(閉城17:00) |
休城日 | 12月29日〜31日 |
入城料 | 18歳以上:1,300円<br>高校生:400円<br>中学生以下:無料<br>※二の丸御殿観覧料含む |
住所 | 京都府京都市中京区二条通堀川西入二条城町541 |
アクセス | 地下鉄東西線「二条城前駅」から徒歩すぐ<br>市バス「二条城前」から徒歩すぐ |
西本願寺
西本願寺(正式名称:龍谷山本願寺)は、浄土真宗本願寺派の本山です。1591年に豊臣秀吉の寄進により現在地に移転し、その後徳川家康の保護を受けて発展しました。
御影堂と阿弥陀堂
国宝の御影堂は東西48メートル、南北62メートル、高さ約29メートルという日本最大級の木造建築物です。同じく国宝の阿弥陀堂も東西42メートル、南北45メートルの巨大な建築で、その威容に圧倒されます。
唐門
国宝の唐門は、細部まで彫刻が施された豪華絢爛な門です。日がな一日眺めていても飽きないことから「日暮門」とも呼ばれています。
飛雲閣と大イチョウ
国宝の飛雲閣は金閣・銀閣と並ぶ京都三閣の一つですが、通常非公開となっています。境内の大イチョウは樹齢400年を超え、秋には黄金色の葉で参拝者を魅了します。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 5:30〜17:00(11月〜2月は6:00〜) |
拝観料 | 境内無料<br>※書院など一部エリアは特別拝観時のみ公開(要予約・有料) |
住所 | 京都府京都市下京区堀川通花屋町下ル |
アクセス | JR「京都駅」から徒歩15分<br>市バス「西本願寺前」から徒歩すぐ |
教王護国寺(東寺)
東寺は796年に創建された真言宗の根本道場です。823年に嵯峨天皇から空海(弘法大師)に下賜され、以後真言密教の中心寺院として発展してきました。
五重塔
国宝の五重塔は高さ約55メートルで、木造塔として日本一の高さを誇ります。現在の塔は1644年に徳川家光が再建したもので、京都のランドマークとして親しまれています。
金堂
国宝の金堂は東寺の本堂で、1603年に豊臣秀頼の寄進により再建されました。内部には本尊の薬師如来坐像と日光・月光菩薩立像が安置されています。
立体曼荼羅
講堂内には空海が構想した密教の世界観を表現した「立体曼荼羅」があります。21体の仏像が整然と配置されたこの空間は、国宝や重要文化財で構成される圧巻の光景です。
項目 | 内容 |
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開門時間 | 5:00〜17:00 |
拝観時間 | 金堂・講堂:8:00〜17:00(受付終了16:30)<br>観智院:9:00〜17:00(受付終了16:30) |
拝観料(2025年3月19日以降) | 金堂・講堂:大人500円、高校生400円、中学生以下300円<br>観智院:大人500円、高校生300円、中学生以下300円<br>共通券:大人800円、高校生・中学生以下500円<br>※特別公開期間は料金が異なります |
住所 | 京都府京都市南区九条町1 |
アクセス | JR「京都駅」から徒歩15分<br>近鉄「東寺駅」から徒歩10分<br>市バス「東寺東門前」から徒歩すぐ |
北西部エリアの世界遺産(6か所)
京都北西部には6か所の世界遺産が点在しています。このエリアは公共交通機関でのアクセスがやや不便な場所もあるため、タクシーの利用も検討すると効率的です。
西芳寺(苔寺)
西芳寺は奈良時代に行基が開創したと伝えられ、1339年に夢窓疎石が復興した臨済宗の寺院です。約120種類の苔に覆われた境内から「苔寺」の別称で親しまれています。
庭園
特別名勝・史跡に指定されている庭園は、上段が枯山水、下段が池泉回遊式の二段構成となっています。一面を覆う苔の緑は神秘的な美しさで、訪れる人々を魅了します。
拝観方法
西芳寺の拝観は完全予約制です。往復はがきで事前に申し込み、拝観当日は写経などの修行に参加することが拝観の条件となっています。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 拝観時間は申込時に指定 |
拝観料 | 3,000円(中学生以上) |
申込方法 | 往復はがきで拝観希望日の2か月前から受付<br>※詳細は公式情報を確認 |
住所 | 京都府京都市西京区松尾神ケ谷町56 |
アクセス | 京都バス「苔寺・すず虫寺」から徒歩3分 |
天龍寺
天龍寺は1339年に足利尊氏が後醍醐天皇の菩提を弔うために創建した臨済宗天龍寺派の大本山です。京都五山の第一位として格式高い寺院として知られています。
曹源池庭園
特別名勝・史跡に指定されている曹源池庭園は、夢窓疎石の作庭による池泉回遊式庭園です。嵐山と亀山を借景とした雄大な景観は、四季折々の美しさを見せます。
法堂の雲龍図
法堂の天井には、1997年に加山又造が描いた「雲龍図」があります。直径9メートルの円内に描かれた龍は、どの位置から見ても睨まれているように感じる「八方睨みの龍」として話題です。
達磨図
庭園内の多宝殿には、中国の禅僧・達磨大師を描いた「達磨図」があります。どこかユーモラスな表情が印象的な作品です。
項目 | 内容 |
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参拝時間 | 8:30〜17:00(11月21日〜3月20日は17:00まで) |
参拝料 | 庭園(曹源池・百花苑):高校生以上500円、小中学生300円<br>諸堂(大方丈・書院・多宝殿):庭園参拝料に300円追加<br>法堂「雲龍図」特別公開:500円(土日祝日のみ) |
住所 | 京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68 |
アクセス | JR嵯峨野線「嵯峨嵐山駅」から徒歩13分<br>嵐電「嵐山駅」から徒歩すぐ<br>市バス「嵐山天龍寺前」から徒歩すぐ |
高山寺
高山寺は774年に創建され、1206年に明恵上人が再興した華厳宗の寺院です。国宝「鳥獣人物戯画」を所蔵することで知られ、日本漫画の原点とも評されています。
石水院
国宝の石水院は、明恵上人の住房跡に建てられた建物で、鎌倉時代の住宅建築の特徴を色濃く残しています。縁側からの眺めは四季折々に美しく、特に秋の紅葉は格別です。
鳥獣人物戯画
「鳥獣人物戯画」は擬人化された動物たちが生き生きと描かれた絵巻物で、現代漫画の源流とも言われます。現物は京都国立博物館や東京国立博物館に寄託されており、高山寺では複製が展示されています。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 8:30〜17:00 |
拝観料 | 石水院:800円 |
住所 | 京都府京都市右京区梅ヶ畑栂尾町8 |
アクセス | JRバス「栂ノ尾」から徒歩5分<br>市バス「高山寺」から徒歩すぐ |
仁和寺
仁和寺は888年に宇多天皇によって創建された真言宗御室派の総本山です。皇室とゆかりが深く、代々皇族が住職を務める門跡寺院として栄えました。
金堂
国宝の金堂は、御所の紫宸殿を1613年に移築したもので、現存する最古の紫宸殿建築です。内部には本尊の阿弥陀三尊像が安置されています。
五重塔
重要文化財の五重塔は、1644年に建立された高さ約36メートルの塔です。各層の屋根の大きさがほぼ同じという珍しい形状が特徴です。
御室桜
境内の御室桜は、遅咲きの桜として有名です。樹高が低く、「お多福桜」とも呼ばれる独特の姿が人気を集めています。桜の季節には多くの観光客で賑わいます。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 9:00〜17:00(12月〜2月は16:30まで) |
拝観料 | 御殿:大人800円、高校生500円、小中学生300円<br>霊宝館(春季・秋季のみ公開):500円<br>桜開花期間の伽藍特別入山料:大人500円、小中学生200円 |
住所 | 京都府京都市右京区御室大内33 |
アクセス | 嵐電「御室仁和寺駅」から徒歩3分<br>市バス「御室仁和寺」から徒歩すぐ |
龍安寺
龍安寺は1450年に室町幕府の管領・細川勝元が徳大寺家の別荘を譲り受けて創建した臨済宗妙心寺派の寺院です。
石庭
特別名勝・史跡に指定されている方丈庭園は「石庭」として世界的に有名です。幅25メートル、奥行10メートルの白砂の庭に15個の石が配置されたこの枯山水庭園は、作者や作庭意図が不明という謎に包まれています。どの角度から見ても15個すべての石を同時に見ることができないという不思議な配置も話題です。
鏡容池
境内の南側にある鏡容池は、平安時代の貴族の別荘の面影を残す池泉回遊式庭園です。春の桜、初夏のスイレン、秋の紅葉と四季折々の美しい景観を楽しむことができます。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 8:00〜17:00(12月〜2月は8:30〜16:30) |
拝観料 | 大人600円、高校生500円、小中学生300円 |
住所 | 京都府京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13 |
アクセス | 嵐電「龍安寺駅」から徒歩7分<br>市バス「竜安寺前」から徒歩すぐ |
鹿苑寺(金閣寺)
鹿苑寺は1397年に室町幕府第3代将軍・足利義満が建てた山荘・北山殿を、彼の死後に寺院としたものです。正式名称は鹿苑寺ですが、舎利殿の通称である「金閣」から金閣寺として広く知られています。
舎利殿(金閣)
三層の楼閣建築である舎利殿は、二層と三層の外壁に金箔が貼られた豪華な建築です。現在の建物は1955年に再建されたもので、鏡湖池に映る姿は京都を代表する景観として世界中に知られています。
庭園
特別史跡・特別名勝に指定されている庭園は、鏡湖池を中心とした池泉回遊式庭園です。池には葦原島や鶴島など多くの島や石が配され、変化に富んだ景観を形成しています。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 9:00〜17:00 |
拝観料 | 大人500円、小中学生300円 |
住所 | 京都府京都市北区金閣寺町1 |
アクセス | 市バス「金閣寺道」から徒歩3分<br>市バス「金閣寺前」からすぐ |
北東部エリアの世界遺産(5か所)
京都北東部には5か所の世界遺産があります。このエリアには京都を代表する観光名所が集中しており、特に清水寺や銀閣寺は多くの観光客で賑わいます。
賀茂別雷神社(上賀茂神社)
上賀茂神社は678年に現在の社殿が造営されたと伝わる、京都最古の神社の一つです。正式名称は賀茂別雷神社といい、雷の神である賀茂別雷大神を祀っています。
本殿と権殿
国宝の本殿と権殿は、1863年に造替された流造の社殿です。本殿は通常非公開ですが、特別参拝で特別拝観できる期間があります。
立砂
二の鳥居を入った細殿の前には、神が降臨したとされる神山を模した2つの円錐形の砂山「立砂」があります。一方には松の葉が2本、もう一方には3本立てられており、陰陽を表すとされています。
神馬
境内では日曜・祝日に神馬が登場します。白馬が馬場を歩く姿は、乗馬発祥の地とも伝わる上賀茂神社ならではの光景です。
項目 | 内容 |
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参拝時間 | 5:30〜17:00 |
拝観料 | 境内無料<br>特別参拝(本殿・権殿):500円 |
住所 | 京都府京都市北区上賀茂本山339 |
アクセス | 市バス「上賀茂神社前」からすぐ<br>地下鉄烏丸線「北大路駅」から市バスで約10分 |
賀茂御祖神社(下鴨神社)
下鴨神社は、上賀茂神社と並んで京都最古の神社とされています。正式名称は賀茂御祖神社といい、賀茂建角身命と玉依媛命を祀っています。
本殿
東西2棟の国宝の本殿は、1863年に造替された流造の社殿です。糺の森を抜けた先にある楼門から境内に入ると、厳かな雰囲気に包まれます。
糺の森
境内の北側に広がる糺の森は、原生林の面影を残す12万4千平方メートルの森です。太古から続く神聖な森として、国の史跡に指定されています。
河合神社
境内の摂社である河合神社は、美麗の神として信仰を集めています。鏡絵馬と呼ばれる手鏡の形をした絵馬に自分の化粧品で化粧を施して奉納するユニークな風習があります。
項目 | 内容 |
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参拝時間 | 6:30〜17:00 |
拝観料 | 境内無料<br>大炊殿:500円 |
住所 | 京都府京都市左京区下鴨泉川町59 |
アクセス | 市バス「下鴨神社前」から徒歩すぐ<br>京阪「出町柳駅」から徒歩12分 |
延暦寺
延暦寺は788年に最澄が開いた天台宗の総本山です。比叡山全体を境内とする広大な寺院で、約1,200年にわたって日本仏教の中心として発展してきました。法然、親鸞、道元、日蓮など多くの名僧を輩出したことでも知られています。
東塔地区
延暦寺の中心となる東塔地区には、国宝の根本中堂をはじめとする重要な堂宇が集まっています。根本中堂は2016年から大規模な修復工事が行われており、2026年に完了予定です。工事中も拝観は可能で、普段は見られない修復作業の様子を見学できます。
根本中堂
国宝の根本中堂は延暦寺の総本堂で、最澄が灯した「不滅の法灯」が1,200年以上にわたって守り継がれています。内陣には本尊の薬師如来像が安置されています。
西塔・横川地区
東塔地区から離れた場所には西塔地区と横川地区があります。西塔地区には重要文化財の釈迦堂があり、横川地区には横川中堂があります。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 東塔地区:8:30〜16:30(12月は9:00〜16:00、1〜2月は9:00〜16:30)<br>西塔・横川地区:9:00〜16:00(12月は9:30〜15:30、1〜2月は9:30〜16:00) |
拝観料 | 東塔・西塔・横川共通券:大人1,000円、中高生600円、小学生300円<br>国宝殿(宝物館):大人500円、中高生300円、小学生100円 |
住所 | 滋賀県大津市坂本本町4220 |
アクセス | 京阪「出町柳駅」から比叡山ドライブバスで約50分「延暦寺バスセンター」下車<br>叡山電鉄「八瀬比叡山口駅」からケーブルカー・ロープウェイ乗り継ぎで約30分 |
慈照寺(銀閣寺)
銀閣寺は1482年に室町幕府第8代将軍・足利義政が建てた山荘・東山殿を、彼の死後に寺院としたものです。正式名称は慈照寺ですが、観音殿の通称である「銀閣」から銀閣寺として知られています。
観音殿(銀閣)
国宝の観音殿は二層の楼閣建築で、一層は書院造、二層は禅宗様の仏殿となっています。金閣寺と異なり銀箔は貼られていませんが、黒漆の落ち着いた佇まいは「わび・さび」の美学を体現しています。
東求堂
国宝の東求堂は、義政の持仏堂として建てられた建物です。内部の同仁斎は日本最古の書院造として知られ、現代の和室の原型とされています。
銀沙灘と向月台
庭園内には高さ約66センチの銀沙灘と、高さ約180センチの向月台という2つの砂盛りがあります。これらは月の光を反射させて観音殿を照らす装置とも、波や富士山を表現したものとも言われています。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 8:30〜17:00(12月〜2月は9:00〜16:30) |
拝観料 | 大人500円、小中学生300円<br>東求堂・本堂特別拝観(春季・秋季):1,000円(別途要) |
住所 | 京都府京都市左京区銀閣寺町2 |
アクセス | 市バス「銀閣寺道」から徒歩10分<br>市バス「銀閣寺前」から徒歩5分 |
清水寺
清水寺は778年に開創された北法相宗の大本山です。平安京遷都以前からの歴史を持ち、「清水の舞台」で知られる本堂は京都を代表する観光名所となっています。
本堂
国宝の本堂は1633年に再建された建物で、「清水の舞台」として知られる懸造の舞台が特徴です。舞台は檜の柱と貫で組まれ、釘を一本も使わない伝統工法で造られています。舞台からは京都市街を一望できます。
音羽の滝
本堂の奥にある音羽の滝は、清水寺の寺名の由来となった霊水です。三筋に分かれて流れ落ちる滝の水は、それぞれ学問・恋愛・長寿のご利益があるとされ、多くの参拝者が訪れます。
三重塔
重要文化財の三重塔は高さ約31メートルで、国内最大級の三重塔です。鮮やかな朱色が美しく、清水寺のシンボルの一つとなっています。
地主神社
本堂の北側に隣接する地主神社は、縁結びの神様として人気があります。恋占いの石や縁結びのお守りを求めて、多くの若い参拝者が訪れます。
項目 | 内容 |
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拝観時間 | 6:00〜18:00(季節により変動あり) |
拝観料 | 大人400円、小中学生200円 |
住所 | 京都府京都市東山区清水1丁目294 |
アクセス | 市バス「五条坂」または「清水道」から徒歩10分<br>京阪「清水五条駅」から徒歩25分 |
効率的に巡るモデルコース
京都の世界遺産17か所は広範囲に点在しているため、すべてを訪れるには最低でも2〜3日必要です。ここでは、滞在日数や目的に応じた3つのモデルコースをご紹介します。
全スポット制覇2泊3日コース
京都の世界遺産17か所すべてを巡る場合の、地下鉄とバスを組み合わせた2泊3日のモデルコースです。地下鉄・バス一日券(大人1,100円)を各日購入することをおすすめします。
1日目:中南部エリア
所要時間:約8時間
京都駅 → JR奈良線(20分)→ 宇治駅 → 徒歩(10分)→ 平等院(60分)→ 徒歩(10分)→ 宇治上神社(30分)→ 徒歩(10分)→ 京阪宇治駅 → 京阪宇治線(7分)→ 六地蔵駅 → 徒歩(2分)→ 地下鉄六地蔵駅 → 地下鉄東西線(4分)→ 醍醐駅 → 徒歩(10分)→ 醍醐寺(90分)→ 徒歩(10分)→ 醍醐駅 → 地下鉄東西線(25分)→ 二条城前駅 → 徒歩(1分)→ 二条城(90分)→ 徒歩(3分)→ 堀川御池バス停 → 市バス9系統(15分)→ 西本願寺前バス停 → 徒歩すぐ → 西本願寺(45分)→ 徒歩(8分)→ 九条車庫前バス停 → 市バス42系統(7分)→ 東寺東門前バス停 → 徒歩すぐ → 東寺(60分)→ 徒歩(15分)→ 京都駅
2日目:北西部エリア
所要時間:約9時間
京都駅 → 地下鉄烏丸線(5分)→ 四条駅 → 徒歩(3分)→ 阪急烏丸駅 → 阪急京都線(7分)→ 桂駅 → 阪急嵐山線(7分)→ 上桂駅 → 京都バス73系統(15分)→ 苔寺バス停 → 徒歩(3分)→ 西芳寺(90分、要予約)→ タクシー(15分)→ 天龍寺(60分)→ 徒歩すぐ → 嵐山天龍寺前バス停 → 市バス93系統(30分)→ 山越中町バス停 → 徒歩(3分)→ 山越バス停 → 市バス59系統(9分)→ 竜安寺前バス停 → 徒歩すぐ → 龍安寺(45分)→ 徒歩(7分)→ 立命館大学前バス停 → 市バス12系統または59系統(5分)→ 金閣寺道バス停 → 徒歩(3分)→ 金閣寺(60分)→ 徒歩(10分)→ わら天神前バス停 → 市バス205系統(10分)→ 御室仁和寺バス停 → 徒歩すぐ → 仁和寺(60分)→ 徒歩(20分)→ 高山寺(45分)→ 徒歩(5分)→ 栂ノ尾バス停 → JRバス高雄京北線(50分)→ 京都駅
※高山寺へのアクセスは、仁和寺からタクシー利用(約15分)も可能です。
3日目:北東部エリア
所要時間:約10時間
京都駅 → 地下鉄烏丸線(10分)→ 北大路駅 → 北大路バスターミナル → 市バス北3系統(15分)→ 上賀茂神社前バス停 → 徒歩すぐ → 上賀茂神社(45分)→ 徒歩すぐ → 上賀茂神社前バス停 → 市バス4系統(20分)→ 下鴨神社前バス停 → 徒歩すぐ → 下鴨神社(60分)→ 徒歩(10分)→ 出町柳駅 → 叡山電鉄+ケーブルカー+ロープウェイ(50分)→ 比叡山頂 → 徒歩 → 延暦寺(120分)→ 徒歩 → 比叡山頂 → ロープウェイ+ケーブルカー+叡山電鉄(50分)→ 出町柳駅 → 市バス102系統(5分)→ 銀閣寺道バス停 → 徒歩(10分)→ 銀閣寺(60分)→ 徒歩(3分)→ 銀閣寺前バス停 → 市バス100系統(20分)→ 清水道バス停 → 徒歩(10分)→ 清水寺(90分)→ 徒歩(5分)→ 五条坂バス停 → 市バス206系統(15分)→ 七条京阪前バス停 → 徒歩(2分)→ 七条駅 → 地下鉄烏丸線(7分)→ 京都駅
※延暦寺への交通費は地下鉄・バス一日券に含まれません(叡山電鉄・ケーブル・ロープウェイで片道約1,000円)。
人気スポット1日コース
時間が限られている方向けの、特に人気の高い5か所を巡る1日コースです。地下鉄・バス一日券(大人1,100円)の利用がおすすめです。
所要時間:約8時間
京都駅 → 地下鉄烏丸線(10分)→ 北大路駅 → 北大路バスターミナル → 市バス205系統(10分)→ 金閣寺道バス停 → 徒歩(3分)→ 金閣寺(60分)→ 徒歩(10分)→ わら天神前バス停 → 市バス205系統(5分)→ 竜安寺前バス停 → 徒歩すぐ → 龍安寺(45分)→ 徒歩すぐ → 竜安寺前バス停 → 市バス59系統(15分)→ 円町駅前バス停 → 徒歩(3分)→ 円町駅 → 地下鉄東西線(4分)→ 二条城前駅 → 徒歩(1分)→ 二条城(90分)→ 徒歩(1分)→ 二条城前駅 → 地下鉄東西線(10分)→ 蹴上駅 → 徒歩(15分)→ 銀閣寺道バス停 → 市バス5系統(10分)→ 銀閣寺道バス停 → 徒歩(10分)→ 銀閣寺(60分)→ 徒歩(3分)→ 銀閣寺前バス停 → 市バス100系統(20分)→ 清水道バス停 → 徒歩(10分)→ 清水寺(90分)→ 徒歩(5分)→ 五条坂バス停 → 市バス206系統(15分)→ 七条京阪前バス停 → 徒歩(2分)→ 七条駅 → 地下鉄烏丸線(7分)→ 京都駅
名庭園鑑賞1日コース
京都を代表する美しい庭園を持つ世界遺産6か所を巡るコースです。地下鉄・バス一日券(大人1,100円)の利用がおすすめです。
所要時間:約9時間
京都駅 → 地下鉄烏丸線(5分)→ 四条駅 → 徒歩(3分)→ 阪急烏丸駅 → 阪急京都線(7分)→ 桂駅 → 阪急嵐山線(7分)→ 上桂駅 → 京都バス73系統(15分)→ 苔寺バス停 → 徒歩(3分)→ 西芳寺(90分、要予約)→ タクシー(15分)→ 天龍寺(60分)→ 徒歩すぐ → 嵐山天龍寺前バス停 → 市バス93系統(30分)→ 山越中町バス停 → 徒歩(3分)→ 山越バス停 → 市バス59系統(9分)→ 竜安寺前バス停 → 徒歩すぐ → 龍安寺(60分)→ 徒歩(7分)→ 立命館大学前バス停 → 市バス12系統または59系統(5分)→ 金閣寺道バス停 → 徒歩(3分)→ 金閣寺(60分)→ 徒歩(10分)→ わら天神前バス停 → 市バス205系統(15分)→ 烏丸今出川バス停 → 徒歩(2分)→ 今出川駅 → 地下鉄烏丸線(7分)→ 蹴上駅 → 徒歩(20分)→ 銀閣寺(60分)→ 徒歩(20分)→ 蹴上駅 → 地下鉄東西線(4分)→ 二条城前駅 → 徒歩(1分)→ 二条城(90分)→ 徒歩(1分)→ 二条城前駅 → 地下鉄東西線(4分)→ 烏丸御池駅 → 地下鉄烏丸線(3分)→ 京都駅
※西芳寺へのアクセスは地下鉄・バス一日券の範囲外となります。阪急電鉄の別途料金が必要です。
まとめ:世界遺産を巡って京都の魅力を満喫
京都の世界遺産17か所は、それぞれが千年以上の歴史を持ち、日本文化の粋を今に伝える貴重な文化財です。寺院建築の美しさ、庭園の洗練された美、仏像や障壁画などの芸術作品、そして脈々と受け継がれてきた精神文化など、世界遺産を巡ることで京都が誇る日本文化のエッセンスを深く体験できます。
広範囲に点在する世界遺産をすべて訪れるには時間と計画が必要ですが、本記事で紹介したエリア別の特徴やモデルコースを参考に、自分の関心や滞在日数に合わせた観光計画を立てることで、効率的かつ充実した京都観光が実現できるでしょう。
バス一日乗車券を活用し、近接する寺社をセットで訪問するなどの工夫をすることで、交通費を抑えながら多くの世界遺産を訪れることができます。また、事前に各寺社の開門・閉門時間や特別公開の情報を確認しておくことも、スムーズな観光には欠かせません。
四季折々に異なる表情を見せる京都の世界遺産は、何度訪れても新たな発見があります。春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、季節ごとに異なる美しさを楽しむことができるのも京都観光の大きな魅力です。
この記事が、皆様の京都の世界遺産巡りの計画に役立ち、充実した京都観光の実現につながることを願っています。千年の都が育んだ日本文化の真髄を、ぜひその目で確かめてください。