奈良の竜田川は百人一首にも詠まれている大変有名な場所です。また、竜田川の川沿いの公園は散策スポットとして大変人気があります。こちらではそんな竜田川について、おすすめの観光スポットや周辺の人気スポットなどをご紹介していきます。
奈良の竜田川を大調査
奈良の竜田川と言えば、百人一首にも詠まれるほど美しい景色が広がる場所です。紅葉の時期には竜田川沿いの公園の紅葉が大変美しく、観光客にも大変な人気があります。こちらではそんな奈良の竜田川について、竜田川を詠んだ歌についてや、竜田川の観光スポット、さらに竜田川周辺の人気スポットについてなどをご紹介していきます。
斑鳩という町について
百人一首に詠まれるほどの有名な川である竜田川は、奈良の斑鳩町というところにあります。ちなみに斑鳩は「いかるが」と読みます。
斑鳩町には竜田川だけでなく、大和川、富雄川などが流れる水と緑が大変豊かな町です。また、斑鳩町の町の歴史は大変古く、聖徳太子の時代から存在していました。
斑鳩町には、竜田川だけでなく、法隆寺などの歴史的な寺社や古墳なども多くあり、現在では、多くの観光客が訪れる町でもあります。
またこの斑鳩(いかるが)という少し変わった町の名前の由来は諸説あるのですが、この地に「いかる」という鳥が生息しており、聖徳太子が法隆寺を立てる場所を考えていた時に、この「いかる」の群れが集まって、この地を仏法興隆の地とすべきであると教えたたと言われています。
竜田川ってどんな川?
竜田川は奈良県の北西部を流れる川で、長さは約15キロメートルあります。一級河川である竜田川は、上流は生駒川、中流は平群川と呼ばれています。
また、斑鳩町の南西部には竜田公園があります。竜田公園は竜田川沿いに約2キロメートル、総面積14ヘクタールある公園です。
竜田川は紅葉の名所
この公園は百人一首にも詠まれるほどの紅葉の名所として知られています。古くは、古事記や日本初紀に登場する、崇神天皇も行幸したと言われています。
また、崇神天皇は五穀豊穣を祈願し、上流から流れてきた8枚のもみじの葉を竜田神社に献上しました。その後この美しい紅葉は、文武天皇なども魅了し、江戸時代には地元の国学者などがもみじの保護などを行ってきました。現在も多くの観光客が公園に紅葉を見にやってきます。
竜田川の紅葉の季節
竜田川の竜田公園の紅葉は観光客に人気のスポットですが、紅葉を見るのであればベストシーズンを狙って行くのがおすすめです。
竜田公園の紅葉の見ごろは毎年11月下旬から12月上旬ごろです。11月末の週末には「紅葉祭り」も行われますので、ホームページなどでスケジュールを確認してみてください。
百人一首に登場する竜田川1:在原業平の和歌
奈良の竜田川沿いに広がる竜田公園の紅葉の美しさを詠んだ歌として、一番有名なのは、百人一首の「千早ふる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」という歌でしょう。
この歌の意味は、「不思議なことが起こっていたという神代の昔にも聞いたことがない。竜田川の水が散った紅葉で紅の絞り染めになっているなんて」という意味になります。
竜田川の水面が紅葉で絞り染めになっているなんて、想像するだけでとてもロマンティックです。この歌を詠んだのは、百人一首の歌人の一人である在原業平です。
在原業平といえば、平安時代のプレイボーイとしてとても有名で、「伊勢物語」は在原業平をモデルにして書かれたといわれています。
平安時代に朝廷が作った歴史書の中では、在原業平は「体貌閑麗、放縦にして拘わらず、略才学無し、善く倭歌を作る」と表現されています。
これは、在原業平が、顔も容姿も良いけれど、自由奔放で、頭は良くないけれど、良い歌は多く作るという意味だそうです。
そんな在原業平の歌として百人一首に選ばれた「千早ふる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」という歌には、倒置法がうまく使われています。
「千早ふる 神代も聞かず」という冒頭で、「こんなことは聞いたことがない」という驚きを表現することで、読み手の興味を引くのと同時に後半の紅葉の美しさををさらに強調しています。
また、在原業平は和歌の名人であるとともに、鷹狩の名手でもあったぞうです。朝廷の記録では「頭は良くない」などと記されていますが、女性に人気があったというのもわかる気がします。
百人一首に登場する竜田川2:能因法師
竜田川の美しい紅葉の様子を詠んだ和歌で、百人一首に選ばれているものがもう一首あります。それが「嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり」です。
この歌の意味は、「山風が吹く三室山のもみじで竜田川の水面が錦の様に美しい」という意味の歌になります。
こちらの歌を詠んだのは、能因法師です。能因法師は大阪生まれで、大学で詩歌を学んだのですが、その後26歳で出家します。
能因法師は東北、中国地方、市国などを旅して歌を詠むさすらいの歌人でもありました。そしてその地の人気の名所などを詠みました。
竜田川の美しさが全国的に知られるようになったのは、この能因法師の歌がきっかけだったともいわれています。
この歌には、竜田川の風景を絢爛豪華な錦のようであると表現することで、竜田川の圧倒的な美しさに紅葉の紅だけでなく、それ以外の様々な色の美しさが加わったものを想像することができます。
在原業平の竜田川の歌は紅色の美しさや紅色の濃淡をイメージしますが、能因法師の竜田川は、紅だけでなく、金色やもみじの模様の美しさなど、よりカラフルで立体的な描写のように感じます。
竜田川の人気スポット1:紅葉橋
竜田川がある竜田公園には人気の観光スポットがいくつかあります。まず一つめは「紅葉橋」です。
紅葉橋は竜田川にかかる橋です。しかしながら、その紅色の欄干と竜田川沿いの紅葉の紅い葉の色がとてもマッチしていて、とても雰囲気があります。
現在の竜田川は川幅も広く、川岸も整備されていますので、在原業平の歌のように、散った紅葉で水面が絞り染めの様になっているという風景は見られません。
しかしながらこの紅葉橋付近の紅葉は大変すばらしく、地上に見える紅葉の様子だけでなく、水面に映りこむ紅葉の鮮やかな色がとても美しく、とても画になる風景が広がっています。
紅葉橋を遠目に見た風景や、紅葉橋からの風景、どこを切り取っても息をのむほどに美しい紅葉の写真を撮ることができます。
竜田川の人気スポット2:三室山
竜田公園にはもう一つおすすめのスポットがあります。それがこちらの「三室山」です。三室山は能因法師の歌にも登場します。
「山」といっても標高は82メートルほどの山で、ちょっとした丘のような場所です。しかしながら三室山は大変神聖な山で、神が鎮座する山とされて、昔からあがめられています。
三室山の頂上には、2メートル弱の高さの石でできた五輪塔があります。この五輪塔は能因法師の供養塔とも言われています。
竜田川沿いは紅葉の季節である秋に多くの観光客が訪れますが、この三室山は春には桜が大変美しく桜の名所としても有名です。春にこの地を訪れる際にはお花見もおすすめです。
竜田川周辺の観光スポット1:法隆寺
竜田公園から約2キロほどのところにあるのが、こちらの法隆寺です。法隆寺もまた、多くの歌に詠まれているとても人気の観光スポットです。
法隆寺と言えば、聖徳太子が建立したといわれる寺であり、創建されたのは7世紀であるといわれています。法隆寺は現代において、古代寺院の姿を見ることができる貴重な文化遺産でもあります。
法隆寺と言えば、五重塔をなどを含む西院伽藍が有名ですが、この西院伽藍は現存する世界最古の木造建築物群です。
また、法隆寺は、人気の五重塔自体はそんなに大きくないのですが、敷地としては東京ドーム14個分の広さがあり、とにかく広いです。入り口(南大門)から五重塔にたどり着くまでも数百メートル歩きますので、歩きやすい靴で行くと良いでしょう。
そして法隆寺と言えば、「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という、あまりにも有名な句に詠まれた場所でもあります。法隆寺の境内にはこの句の作者である正岡子規の句碑もあります。
建造物を見て回るだけでなく、当時の貴重な宝物を鑑賞できる大宝蔵院などもあり見どころたっぷりのおすすめ観光スポットです。法隆寺をじっくりと見て回りたいという場合は数時間を見積もって行くのがおすすめです。
竜田川周辺の観光スポット2:中宮寺
中宮寺は、前述の法隆寺東院に隣接する寺です。創建当時は、現在の場所より更に400メートルほど東にありました。現在の市に移動したのは16世紀末であるとされています。
中宮寺も7世紀前半に建てられたものであるということは調査の結果からわかっているのですが、作られた経緯については諸説あります。
一説には聖徳太子が建立した寺の内の一つだという説、そしてもう一説には聖徳太子の葉はである、穴穂部間人皇女が、皇女の宮殿を改築したものだというものがあります。
中宮寺は貯蔵されている国宝も見どころの一つです。中宮寺には「天寿国繍帳残闕(てんじゅこくしゅちょうざんけつ)」と「木像半跏菩薩(もくぞうはんかぼさつ)」の二つの国宝があります。
天寿国繍帳残闕は現在はレプリカが展示されていますが、日本最古の刺繍としてとても貴重なものです。木像半跏菩薩は飛鳥時代の木製の仏像です。
竜田川周辺の観光スポット3:信貴山 朝護孫子寺
奈良にはおすすめの観光スポットが点在しています。こちらの信貴山朝護孫子寺も竜田公園から約5キロほどの距離の場所にあるおすすめの観光スポットです。
信貴山は437メートルの雄岳(北蜂)と400.5メートルの雌岳(南蜂)の二蜂からなっています。こちらの山も聖徳太子にゆかりのある山です。
聖徳太子が物部守屋討伐のために河内稲村城に行く途中にこの山を通った際、聖徳太子が戦いの勝利の祈願をすると空から毘沙門天王があらわれたそうです。
その毘沙門天王があらわれたのが、寅年、寅日、寅の刻でした。そして聖徳太子は見事に戦いに勝利しました。
そこで、聖徳太子は毘沙門天王を祀る朝護孫子寺を創建し、「信ずべき貴ぶべき山」として信貴山と名付けました。
毘沙門天が本尊で、虎が守り神であることから、勝負事などの祈願におすすめですし、パワースポットとしてもおすすめです。
竜田川と竜田揚げ
竜田揚げといえば、子供から大人まで大好きな揚げ物です。この竜田揚げは実は竜田川に由来していることをご存知でしょうか。
竜田揚げは、肉もしくは魚を醤油やみりん、生姜などに漬けこんで下味を付け、臭みをとってから、片栗粉をまぶして揚げたものです。
この竜田揚げがどうして竜田川に由来しているかと言うと、諸説あり、一説では、油で揚げた際に、具材に下味としてつけた醤油の色が赤く見え、ところどころに衣の片栗粉が白く浮かんでいる様子が、もみじが流れる竜田川をイメージするからだそうです。
そしてもう一説によると、旧日本海軍の軽巡洋艦「龍田」で唐揚げを作る際、小麦粉ではなく片栗粉をまぶして揚げたことから龍田(竜田)揚げになったともいわれています。
しかしこの軽巡洋艦「龍田」の名前はもともと奈良の竜田川から来ているので、いずれにせよ、竜田揚げは竜田川が料理名のルーツであると言えるでしょう。
竜田公園へのアクセス方法
奈良は日本の始まりの地であり、多くの歴史的な建造物や遺跡などがある、もしくはある可能性があるため、地面を深く掘って強固な地盤を作らなくてはいけない高層ビルや、市内に張り巡らされた地下鉄などはありません。
そのため、奈良での交通手段は主にバスになります。しかし、人気の観光名所を数か所、効率よく回るのであれば、レンタカーをして回るのが圧倒的におすすめです。
例えば、関西の窓口の一つである新大阪駅から竜田公園にアクセスする場合、電車で行こうと思うと1時間以上はかかりますが、車で行く場合は、40分ほどで行くことができます。
レンタカーをしない場合は、まず竜田公園の最寄りの駅である王寺駅を目指します。王寺駅からバスに乗り、5分ほどで「竜田大橋」という停留所があるので、そちらで下車してさらに徒歩5分ほどで到着します。
竜田川で美しい景色を堪能しよう
いかがでしたでしょうか。奈良の竜田川に関してご紹介してみました。13世紀に選定されたといわれる百人一首に詠まれた景色は、現代の人が見ても大変美しく、まるで別世界に来たような気分になります。竜田川の美しい紅葉を鑑賞し、周辺のスポットをを巡って、古都奈良の観光を楽しみましょう。