添乗員ライターがお届けする旅行情報。今回は、東京都品川区の戸越銀座商店街の近くに鎮座する「戸越八幡神社」をご紹介します。2026年に御鎮座500年を迎える神社で、江戸時代末期に改築された社殿や、木々に包まれた参道が残ります。毎月デザインが変わる御朱印も、境内を訪れる楽しみの一つです。
戸越八幡神社の概要
戸越八幡神社は、厄除開運の御神徳をもつ応神天皇(誉田別命)をお祀りする戸越の鎮守です。商店街の周辺に広がる住宅街の中に、緑の濃い境内があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 戸越八幡神社(正式名称は八幡神社) |
| 営業時間 | 授与所の受付は9:00〜16:00 |
| 住所 | 〒142-0041 東京都品川区戸越2-6-23 |
| アクセス | 都営浅草線「戸越駅」から徒歩9分、東急大井町線「戸越公園駅」から徒歩8分、東急池上線「戸越銀座駅」から徒歩11分 |
参拝前に押さえたい授与所の時間と御朱印の書き入れ日
戸越八幡神社で気をつけたいのは、授与所の受付時間と、御朱印帳へ直接書き入れてもらえる日が限られる点です。授与所の受付は9:00から16:00までです。16時を過ぎると御朱印は授かれないため、夕方の参拝では間に合わない場合があります。
御朱印は基本的に書き置きでの授与で、御朱印帳へ直接書き入れてもらえる直書きは水曜日と日曜日に限られます。例大祭の日のように書き入れが休止される年もあり、その日は書き置きでの授与となります。
神社側も、時間に余裕をもって参拝するよう呼びかけています。境内にはゆっくり過ごせるスペースがあるため、授与所の時間から逆算して早めの到着を心がけると、参拝後の時間まで落ち着いて使えます。
戸越の地名と八幡宮の起こり

戸越八幡神社の歴史は、戸越という地名の由来と深く結びついています。ここでは、地名の由来から現在の社殿まで、順に振り返ります。
「江戸越え」に由来する戸越の地名
戸越の地名の始まりと伝えられるのが、次の古歌です。
江戸越えて清水の上の成就庵 ねがひの糸のとけぬ日はなし
歌に詠まれた「成就庵」は、かつて一本杉という字名のあった場所にあった庵寺で、藪清水の池のほとりにありました。遠近から参詣者が絶えなかったと、神社の由緒に記されています。
藪清水から現れた御神体
由緒によると、大永6年(1526年)8月15日、村内の藪清水の水源地から御神体が出現しました。諸国を行脚していた行永法師が成就庵に立ち寄った際、夢の中で池から光が放たれるのを見て、池の中を探したところ、誉田別命(応神天皇)の御神体が見つかったと伝わります。
行永法師は草庵に御神体を奉安し、山城国(京都府)の石清水男山八幡宮の御分霊を勧請して祀りました。これが戸越八幡神社の創立の起源です。2026年は、この創立から数えて500年にあたります。
行慶寺と八幡宮の建立
それから数十年後の文禄元年(1592年)、八幡山行慶寺の開山である念誉上人が現地に八幡宮を建立し、御神体と本地仏の阿弥陀仏を一緒に祀りました。明治の神仏分離までは、隣の行慶寺が別当寺を務めていました。
元禄元年(1688年)12月15日には、宮居が現在の地に遷されます。このとき末社として春日社と稲荷社も建立され、別当は行慶寺の覚誉上人でした。
現在の社殿
現在の社殿は、安政2年(1855年)8月15日に改築されたもので、欅造りの入母屋造です。拝殿、幣殿、本殿が連結した構成で、江戸時代の姿を今に伝えています。
御神体を奉安する御厨子は、明和7年(1770年)に讃州丸亀の京極家家中の吉田喜助清享が奉納したもので、現在も残ります。神座に敷く御褥も、天明5年と寛政元年に吉田一族が寄進した2枚が現存しています。
森の木々に包まれた憩いの境内

戸越八幡神社が掲げる言葉は、「森林から光と影が織り成す憩いの神社」です。参道を歩きお参りすれば自然と心が通いだす、という一文も神社の紹介に添えられています。この言葉を形にしたように、境内には参拝者がゆったり過ごすための工夫があり、その象徴がソファ席です。
木々に包まれた参道
鳥居をくぐると、細い参道の両脇に大きな木々が茂り、住宅街にいることを忘れる静けさが広がります。『江戸名所図会』にも長い参道が描かれており、木立に囲まれた参道の姿は江戸時代から大きく変わっていません。
参道脇と神楽殿前のソファ席
手水舎の先にある神楽殿の前から参道の脇にかけて、ソファやテーブルが置かれています。オープンエアのカフェのようにソファが並ぶ神社は珍しく、初めて訪れた人が驚く光景です。ソファに座ると正面に社殿を望めるため、木漏れ日の下で参拝の余韻に浸れます。
ソファ席は、御朱印の授与を待つ参拝者が座って休めるよう設けられた空間です。人気の御朱印は授与までに時間がかかることがあり、その待ち時間をくつろぎの時間に変えています。
お茶やお菓子のおもてなし
御朱印を授かった参拝者には、お茶やお菓子が出されることがあります。暑い時期には冷たい麦茶が振る舞われ、日によってはコーヒーなどの飲み物が用意されることもあります。神社の方の説明では、こうしたおもてなしは「憩いの神社」という考え方から生まれたものです。
雑誌やおもちゃも置かれたくつろぎの一角
ソファの周りには、御朱印や神社に関する雑誌、子ども向けの本やおもちゃが置かれています。一角には輪投げのコーナーもあり、親同士がソファで語らう足元で、子どもが遊ぶ光景も見られます。参拝を済ませたあとも、用事がなくても立ち寄れる、地域に開かれた境内です。
ご祭神の応神天皇
ご祭神の応神天皇は、厄除開運の神として崇められるだけでなく、我が国の文教の祖、殖産の守護神としても仰がれています。養蚕や絹織、造船や縫工の技術を盛んにした天皇とされ、神社の由緒にもその事績が記されています。
月ごとに変わる戸越八幡神社の御朱印
戸越八幡神社は、御朱印の種類が多い神社です。神社の案内では御朱印に番号が付けられ、授与の日や期間によって内容が変わります。
月替わり御朱印
基本となるのは、1番の月替わり御朱印です。毎月、1日から14日までと15日から月末までの2期間でデザインが切り替わります。同じ月でも前半と後半で異なる御朱印を授かれます。
御朱印の初穂料
御朱印の初穂料は、片面の御朱印が500円です。見開きの御朱印や一部の限定御朱印は1,000円で、以前は300円だった通常の御朱印も、現在は500円に改められています。御朱印帳とあわせて、初穂料を表にまとめます。
| 項目 | 初穂料 |
|---|---|
| 御朱印(片面) | 500円 |
| 御朱印(見開き・一部の限定御朱印) | 1,000円 |
| オリジナル御朱印帳 | 1,500円 |
オリジナル御朱印帳
戸越八幡神社には、社殿や神楽殿の神輿渡御図、猫と犬のイラストなど、デザインの異なるオリジナル御朱印帳が用意されてきました。大判サイズの御朱印帳に、成就庵の古歌を記したものもあります。御朱印帳は、御朱印と同じ授与所で授かります。
誕生日特別御朱印
誕生日の当日に限って授かれる、誕生日特別御朱印もあります。授与所で誕生日であることを伝え、身分証明書で生年月日を示すと授かれます。
月次祭ゴールド御朱印
毎月1日の朔日には、月次祭が営まれます。この日にちなんだ御朱印が、月次祭ゴールド御朱印です。御朱印の日付は月次祭の行われる1日となります。
季節の特別御朱印とケンポナシの御朱印
季節や行事に合わせた特別御朱印も、折々に頒布されます。御神木のケンポナシを描いた御朱印は、季節ごとに絵柄が変わります。
境内で暮らす猫が御朱印に描かれることもあり、神社のやわらかな雰囲気が絵柄にも表れています。
東急花御朱印
東急沿線の神社寺院を巡る企画の花御朱印も授与されています。授与には、花御朱印参拝カードの提示が必要です。
特別な御守のセット
神社では、特別御朱印に特別な御守を組み合わせたセットが頒布されることもあります。開運守や健康守、金運守など、願意の異なる御守から選べる企画も行われてきました。
境内の建物と文化財

戸越八幡神社の境内には、再建の時期が異なる建物や、地域の歴史を物語る石造物が並びます。それぞれの見どころを順にたどります。
拝殿と本殿
拝殿の内部には、龍の彫刻が施されています。本殿(幣殿)は安政2年の再建で、ご祭神は誉田別命です。
稲荷社と春日社
拝殿の手前には、左に稲荷社、右に春日社が並びます。どちらも昭和41年の再建で、稲荷社のご祭神は豊受姫命、春日社のご祭神は天児屋根命です。春日社の例祭は、毎年3月に営まれます。
神楽殿と手水舎
神楽殿は昭和4年の再建で、手水舎は昭和40年の再建です。社務所は平成3年12月に改築されました。時代ごとの建物が境内に重なっている点が、歴史の長い神社らしい景観を生んでいます。
御神木ケンポナシ
境内の御神木はケンポナシで、品川区指定の天然記念物です。樹齢は250年から300年とされ、参道の木々の中でもひときわ存在感があります。
石造狛犬と奉納絵馬
石造の狛犬は、延享3年(1746年)に寄進されたものです。拝殿には奉納絵馬も残り、江戸時代の信仰の様子をうかがえます。
さし石(力石)
境内には、若者たちが力くらべに使った力石(さし石)が6つ残ります。持ち上げた重さを競った昔の暮らしを伝える民俗資料です。
祭典と年間行事
戸越八幡神社では、毎月1日の月次祭のほか、季節ごとの祭典が営まれます。
菖蒲祭
5月5日には菖蒲祭が営まれます。例大祭とともに、地域を挙げての祭礼です。
夏越の大祓
6月28日には、夏越の大祓として茅の輪神事が行われます。半年間の穢れを祓い、残りの半年の無病息災を願う行事です。
例大祭
9月の第2土曜日と日曜日は、例大祭です。戸越の鎮守の祭礼として、地域の人々が集まります。
年越の大祓
12月28日には、年越の大祓が営まれます。11月23日の新嘗祭とあわせて、1年の締めくくりの行事です。
ご祈祷
戸越八幡神社では、神前結婚式、安産祈願、お宮参り、七五三、地鎮祭などのご祈祷を随時受け付けています。厄除開運の御神徳をもつ神社だけに、節目の祈願で訪れる人も多い神社です。
戸越八幡神社周辺のおすすめスポット
神社は戸越銀座商店街や戸越公園に近く、あわせて歩くと戸越の歴史がつながって見えてきます。
戸越銀座商店街

全長約1.3kmにおよぶ、東京でも有数の長さの商店街です。約400の店舗が並び、食べ歩きを楽しむ人で賑わいます。名前の由来は、関東大震災で被害を受けた銀座通りのレンガを譲り受け、水はけの悪かった道に敷いたことです。「〇〇銀座」と呼ばれる商店街の元祖ともいわれ、戸越銀座コロッケなどの名物も生まれました。戸越銀座駅の改札を出てすぐ目の前に通りが伸びているので、参拝の前後に立ち寄るのがおすすめです。

戸越公園
肥後熊本藩の細川家下屋敷の庭園跡に整備された公園です。池を中心に、渓谷や滝、築山が配された回遊式庭園で、再建された薬医門や冠木門が大名庭園の面影を伝えます。
昭和10年(1935年)に公園として開園し、梅、桜、シャクナゲ、イチョウなど四季の花木が楽しめます。戸越公園駅の近くにあるので、神社へ向かう道すがらにおすすめの散策先です。
行慶寺
戸越八幡神社の隣にある寺院で、八幡山行慶寺と称します。文禄元年に念誉上人が八幡宮を建立した縁があり、明治の神仏分離まで戸越八幡神社の別当寺を務めました。神社とあわせて歴史をたどる拠点として、立ち寄りたい場所です。
大原不動尊と豊川稲荷東京別院御分社
戸越公園駅から戸越八幡神社へ向かう道筋には、大原不動尊と豊川稲荷東京別院御分社が鎮座します。かつて白蛇様が現在の戸越公園の池から戻られたという由緒を持つ道で、神社が巳の日にちなむ御朱印を案内した年もあります。道中の社寺を巡りながら八幡神社を目指すルートがおすすめです。
戸越八幡神社へのアクセスにおすすめのホテル
戸越銀座商店街のなかや、浅草線で1駅の五反田には、観光にもビジネスにも使いやすいホテルがそろいます。戸越八幡神社への参拝拠点として、選びやすい3軒を紹介します。
アパホテル〈品川 戸越駅前〉
都営浅草線「戸越駅」A2・A3出口から徒歩1分の、戸越銀座商店街の中心部にあるホテルです。全103室が禁煙で、客室には無料のWi-Fiと映像配信サービスが備わります。戸越八幡神社までは戸越駅から徒歩9分なので、参拝の拠点となる宿泊地としておすすめです。
三井ガーデンホテル五反田
JR山手線・都営浅草線・東急池上線の五反田駅から徒歩約3分のホテルです。最上階の16階に宿泊者専用の大浴場があり、神社巡りで歩いた疲れを癒やせます。快眠にこだわった寝具も備わり、落ち着いた滞在を求める人におすすめです。五反田駅からは浅草線で戸越駅まで1駅です。
JR東日本ホテルメッツ プレミア 五反田
JR五反田駅から徒歩1分と、駅に近いホテルです。品川まで約6分、東京まで約18分と、都心の観光にも動きやすい立地です。戸越八幡神社の参拝と都内観光を組み合わせる旅程におすすめです。
戸越八幡神社で御鎮座500年の戸越の歴史に触れる
戸越八幡神社は、江戸越えの古歌に由来する戸越の地名と、大永6年から続く御神体出現の伝承を、今に伝える神社です。江戸時代末期の社殿、樹齢250年から300年のケンポナシ、毎月変わる御朱印と、見どころは尽きません。
御朱印の書き入れ日は水曜日と日曜日なので、日程を合わせて訪れると直書きの御朱印を授かれます。商店街の食べ歩きと戸越公園の散策を組み合わせれば、半日を戸越でゆっくり過ごせます。
戸越駅から徒歩1分のアパホテル〈品川 戸越駅前〉に泊まり、水曜日か日曜日の朝に戸越八幡神社へ向かえば、御鎮座500年の境内で直書きの御朱印を授かり、戻りの戸越銀座商店街で食べ歩きまで楽しめる、戸越らしい一日になります。
